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21世紀の縄文人を目指す男の記録


by jhomonjin
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サバイバルグッズ・・・現場資材編

今回はサバイバルグッズの紹介だが、キャンプ用品を連想する人が多いだろう。
ところが本当のサバイバル経験者にはキャンプ道具がオモチャに見えるらしいのだ。
例えば旧帝国陸軍兵士であった横井庄一さんはグアム島のジャングルで、終戦を知らずに二十年ほど一人でサバイバル生活をしていた人だ。
その横井さんに「ビーパル」というアウトドア雑誌が取材をして、最新のキャンプ道具を見せて感想を聞いた時の事だ。
横井さん曰く「これはオモチャだね」
横井さんの場合は、長期に渡る正真正銘のサバイバル生活だ。
こんな状況で本当に必要なモノは、耐久性と汎用性が求められるのだ。
一般のキャンプ道具は軽量コンパクトで、一時的な使用目的として作られているから、これはもっともな話だ。
本当のサバイバル生活では、生活の根幹を作り出す道具類がないとやっていけないという事。
鍋だって頑丈な物でないと駄目だし、斧や鉈だって必要だろう。
横井さんは、たまたま兵役前に洋裁店に務めていた事もあって、針と糸が活躍したらしい。
得意の裁縫技術で服の繕いや靴の補修、寄集めの布地で洋服のリサイクルまでやっていたのだ。
サバイバルグッズ・・・現場資材編_f0225473_11594130.jpg

足場パイプとKPロープ
これぞ骨太のサバイバルグッズだ。ホームセンターでも50cm刻みで売っている。
直径48mmで相当に丈夫だ。1・5~2mの長さがあれば、テコとして重量物の移動に長宝する。
倒壊家屋の下敷きになった人を救助したり、物品を引っ張り出す時に活躍する。

以前に、一人では到底動かせそうも無い三畳サイズのプレハブ小屋をこの方式で一人で移設した。
後で見た人が、大人四人くらいで移設したのだろうと、すぐに信じて貰えなかった事がある。
長さ2mのパイプをレール状に並べてプレハブ小屋の下に入れ、別の単管をテコにして小屋の端を浮かして、1m前後のパイプを小屋の下に置いてコロにして移設したのだ。
漁師はこの方式で、厚板のレールとコロ丸太で漁船を移動させる。
単管二本あれば毛布を巻き込んで担架も作れるし、両手にパイプ二本を持って重量物の下に差込めば、ゴンゴンと左右交互に押して移動させる事も可能。

ロープがあればパイプ中央から垂らして、重量物を吊り下げて移動できる。
重量170キロの縄文カヌー(丸木舟)は、単管二本でこの方式なら男四人でも移動可能。
ロープはナイロン製の直径6~9mmが使い易いが、安価なトラロープという黄色と黒の寅模様のロープは柔軟性が無いので、トラックロープとか作業用ロープと表記されているのが柔軟で扱いやすい。
綿ロープは摩擦や火には強いが、柔軟性に劣るから新品だと扱い難い。
耐久性と強度からいってポリエステル製かKP製がお奨めだ。この種類は水に浮く。

耐久性や柔軟さではビニロン製がダントツだが、ちょっと高価なので俺は細引き用に買ってある。
因みにハンモック作る時は、ビニロンがいいと聞いたことがある。
天然素材以外のロープ類は、切ったら端っこをライターや蝋燭の火で炙って柔らかくしてから素早く指で摘んで纏めると、端っこがほつれてこない。
ちょっと熱いけど我慢。
子供の頃、漁師がよくこうやって魚具の手入れをしていた。
この写真のロ-プはKP製。

因みにブルーシートもサバイバル用品として便利だが、薄手と厚手の二種類あって、厚手タイプの方が防水性と耐久性はぐんと高い。
色も青以外にも透明や銀色などある。
DIYショップで購入可能なシート素材で最も丈夫なのがターポリン製だが、割高なので普通のビニール製で充分だろう。
重要なのはサイズの選択で、サバイバル用なら1・7m四方のシート(畳み二畳分)だと畳めば小さくなるし扱い易い。大きいのが欲しければ細引きで繋げばいいが、ロープワークとしてカウヒッチは必須。
ただし、ブルーシートを直接かぶって寝ると結露が酷いので、細引きや足場パイプを使って簡易テントを仮設したり、地面に引いたりする使い方の方がお奨め。
細引きは直径3~6mmのKP製だと洗濯物も乾せて安価で丈夫だが、ロープワークを知らないと役に立たないので、最低でも「本結び」「捻り結び」「もやい結び」「ひとえ継ぎ」位は練習しておく事。
さらにテンションをギンギンにかけられる南京縛りを知っていると、飛躍的に応用技が利く。



『私は魔境に生きた』・・・光人社文庫、島田覚夫著。現在も購入可・・・というニューギニアで十年のサバイバル生活をした残留兵士の記録が非常に参考になる。
この人は持っていた斧が酷使で使用に耐えられなくなってきて、炭を焼いて野鍛治までやって刃物のリメイクや廃材利用でリサイクルをしていたのだ。
最後にはカンナまで作って棚などの家具作りをしているのだ。
もちろんそんな技術を知っていた訳ではなく、子供の頃に見た炭焼きや鍛治仕事を思い出しながら工夫していく過程が詳細に出ている。
何度も失敗しながら、落とし穴を作って猪を捕まえ、燻製肉まで作ってしまうのだが、ほとんど縄文時代の生活を予備知識ゼロからスタートして実践しまったところが凄い。

横井さんも島田さんも、必要に迫られて工夫してサバイバル技術を獲得していったのだ。
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大工道具
釘袋に入れて専用のベルトで吊るしておけば、持ち出し易いし、道具の紛失防止になる。
上からカッター、釘抜き三種、金槌、鑿。右は巻尺とバール、ハンマー
これらは大工道具の必需品で、仮設住居を作る時や倒壊家屋の解体で活躍するだろう。
バールは鋼鉄製の鋳型一体成形のタイプより、写真のような銀色をしたパイプになったタイプが軽くて扱い易い。長さが60~75㎝あるバールだと、テコとしても使いやすく現場では非常に長宝するが、40㎝以下だと普通の釘抜きの方がかえって便利。


彼らが秘境で生き抜いた根底には、「自分で工夫する素養」があったと言えるだろう。
本当に必要なサバイバル技術とは具体論以上に、自分で考えて工夫する知恵の事だと俺は思う。
他にも参考文献として、「洞窟おじさん」・・・小学館、加村一馬著・・・がお奨めだ。
13歳で家出してから平成になって57歳で保護されるまで、山中で43年間もサバイバル生活をしていた人の記録である。加村さんも鉈と小刀は必需品だったそうだ。

古武術研究家の甲野善紀先生は、阪神淡路大震災の復興支援に行った時に、倒壊家屋の廃材や鉈などがあるのに、冬の寒いなか誰も薪を作って火を起そうとしなかった事に呆れたと言っていた。
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刃物
上から小型切斧、枝打ち鉈、造園用鋸、小型のナイフはカッターメーカーのオルファ社の切出しナイフ。
斧には木を縦に割る厚い刃の割斧と、横に切断する薄い刃の切斧の二種類あるが、サバイバルにどちらか一本と問われれば切斧だろう。木を割る事より切断する事の方が多い筈だ。
写真の斧は所有の切斧の中でも一番小型のタイプで、このサイズだと持ち歩き易いし扱いも楽だ。
グランフォース・バックス社のスカンジナビアンフォレストというタイプで、スエーデン製だ。手作り品の割りに安くて良く切れるので、国内産の高価な手作り斧よりお奨め。ネット注文可能。

鉈には片刃と両刃あるが、これは好みだ。
ここで紹介している鉈は厚めの両刃で、営林署の人が使っているのをネット注文した。
ハマグリ刃といって厚い両刃の鉈は、割る、切るといった用途以外にも削るという作業もし易いので、俺の究極の一本だ。
鋸は大工用の薄いタイプよりも、植木屋が使う造園鋸や、土方が使う仮枠用鋸が刃が厚くて丈夫だからサバイバルには向いている。
こういった鋸は、刃の形状や大きさも生木仕様になっているので、生木や濡れた木材を切った場合でも目詰りしにくく長切れする。
折畳み式と鞘式があるが、プロでも好みが分かれるところ。俺は状況によって使い分けている。
買う場合には、耐久性が格段に違うのでプロ仕様に限るし、刃渡りが長目の方が使い易い。
俺はこの枝打ち鉈と鋸をベルトで通して一式にして、何時でも車に積んである。
ベルトはホームセンターでも五百円から売っており、大工道具もそうだが道具類はベルトなどで身に付けておけば、現場での紛失防止になる。

愛用の切出しはオルファ社製だ。
四百円くらいで文房具屋のカッター売り場で売っている安物だが、刃の長さが自在に変えられて便利だし、実に良く切れる。
替刃も売っているが、研ぐ事もできるので、俺が木工教室をする時には、生徒にこれを買って貰っている。
ただし本格的な木工には二十年来の愛用品である二千円程度の切り出しを使っている。
刃物は安物でも研ぎ次第で充分使える。

知恵があるとは、廃材を見つけたら鉈を探して薪を作れば焚火を起して豚汁が食えるぞ!と想像できるという事だろう。
やった事がなくても、廃材→鉈→薪→焚火→豚汁と連想できる能力が知恵というもんではないだろうか。
失敗しながら、怪我をしながら、諦めずに工夫を重ねる根気と知恵が最強のサバイバル技術だと思う。

横井さんや島田さんのような戦前派は、身近な日常生活の中で様々な物作りをする現場を見てきた世代だ。
そんな生活の中では、経験が無くても記憶を頼りに再現できてしまえる「観取る能力」と、「工夫する知恵」が育つのだろう。

今回ここで紹介する道具類は、どこでも入手可能な現場資材だ。
しかも使いようで、様々な用途が広がる汎用性のある耐久品だ。
俺はプロ用の資材屋さんやホームセンターに行くと愉しい。
色々連想して遊べるからだ。
暇な時に是非ともホームセンターをブラブラと歩いてみて欲しい。
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スコップ類
左から角スコ二種、剣スコ二種、小型剣スコ
一家に一本の最強サバイバルスコップは「金象印」というメーカーの剣スコでホームセンターでも売っている。
柄が木ではなくパイプ製のタイプがお奨めだ。掘起した石などを丈夫な柄をテコにして移動できるので、プロなら黙って選ぶタフなスコップだ。
植木屋は剣スコのサイドエッジをグラインダーで研いで尖らせて、樹木の根っこ切りに便利な工夫をするし、米軍放出品の折畳みスコップにもこの工夫がしてあった。
ただし真似する場合はスコップ先端まで研いでしまうと、石などで先端が潰れる事もあるので注意。
中央の剣スコもパイプ柄だが、粘性土でもへばりつかない孔開きスコップという便利なタイプ。
当り前だが、孔開きスコップでは砂は掬えないので念のため。


そして街中で工事現場を見つけたら、さりげなく現場の人を観察して頂きたい。
プロはスコップを持つ時に、左手を順手にして柄の上から被せて使う。素人は逆だ。
大工が鋸を引く時には、撫でるように素早く引く。
プロの職人さんが、どんな道具でどんな操作でどんな事をしているのか?
よく見ておく事だ。
街中には先生が一杯いるのだ。
次回はサバイバルグッズ・日用品編です。
未曾有の非常事態時なので、明日にはアップしますので、参考になれば幸いです。
合言葉は『全力を挙げて生き残ろう!』です。
by jhomonjin | 2011-03-16 09:24 | サバイバル