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21世紀の縄文人を目指す男の記録


by jhomonjin
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近代~前近代経由~原始行き

男気のある棟梁のお陰で作業小屋に移ってから一週間が経った。
作業が天候に左右されず、電源があるから電動工具が使えるので飛躍的に作業が進んでいる。

例えば屋外で船体を成形する時には、大斧ではつってから、手斧で掃除して、最後は大工チョウナで平にしていた。
斧で木をはつると繊維ナリに削れていく。
素性のいい、節の無い木ならスカスカと綺麗にはつれていくが、俺の舟の木は捻れと凸凹、節が多いので、慎重にはつっても時にはガッポリと木の中に斧が入り込んでしまう事がある。
狭い範囲に逆目と順目が複雑に入り組んでいるからやっかいだ。
どうしても墨通りに削れてくれない部分が出てくるのだ。
近代~前近代経由~原始行き_f0225473_20493429.jpg
手斧仕事
節は研ぎ澄ました手斧でコツコツと少しづつ削っていく。最後に横からスカッと手斧を入れると平らになるが、節がたくさんあるので大変だ。でも作業自体はビリヤードや波乗りをしている時のように静かで愉しい。

手斧とチョウナで成形しても墨線の内側に大穴が開いてしまては、修正はできっこない。
木のクセのままで繊維に目切れがしていないから、これなら水も弾くだろうし丈夫だろう。
飛鳥時代の寺院が健在なのは、素性のいい檜を、木の習性を知りぬいた大工がこうやって製材していたからだ。
俺の場合は飛鳥の大工と違って、鑓カンナまで使っていない事、段違いに下手糞な事、それに素性のよくないトウヒを使っている事が大きく異なる。
だから出来た舟が下手糞と笑われても仕方無い。
ベストは尽くしているので、『なら、おまん作ってみろっちゃ!』と堂々としていられる。
表面が多少凸凹した荒々しい仕上げでも、縄文カヌーを近代人が原始の道具とまではいかなくても、前近代の斧で作っているのだから、それはそれで味というものだ、と認識していた。

ところが作業小屋に移ってから電動カンナを使えるようになってからというもの、それまで手斧とチョウナでコツコツと半日掛かりで成形していた仕上げが、たった三十分で終わってしまうのだ。
まるで別世界の仕事になった。
近代~前近代経由~原始行き_f0225473_20542454.jpg
電動カンナ
手斧とチョウナでコツコツしていた仕事が、電動カンナだと瞬時に終わる。見た目も素人目にはこっちの方が綺麗だと言われるだろうが、俺は斧やチョウナの刃跡が残っている方がイカスぜ、と思う。


仕上げも電動カンナだと綺麗に平になる。
最近はいよいよ疲れが抜けないので有難いが、部分的にでも平になると、これまでコツコツとチョウナがけしていた部分まで全部綺麗に平にしたくなってきて仕舞うのだ。
電動カンナやチェーンソウといった近代工具は、木の繊維に関係なく自分の好きな形に仕上げる事が出来るので、強引な仕事になる。
表面が平らでも、繊維が目切れしてケバだっているから、水は弾かずに吸い込んで痛みやすいのだという。
前近代の斧やチョウナとは道具としての了見(整体では集注というが)がまるで違う。
近代~前近代経由~原始行き_f0225473_20581822.jpg
4月25日現在
船底、舷側の成形が終わって、船首と船尾の成形に掛かった。今日はお手伝いが来たので、手斧で削って貰ったが、「仕事の成果が目に見えていくのが面白い」と愉しんでのらえたようだ。我が意を得たり、だ。

俺の中に、原始と前近代、近代が矛盾なく同居して揺れ動いている。

刃物を使う仕事は愉しい。緊張感を伴った愉しさで、遊びに近いモードだ。
研ぎや使い方など、ケースバイケースで色々と工夫していくのだ。
ビリヤード、波乗りなんか似た感じがする。
ボクシングのジムワークもどこか似ている。
静かで孤独、工夫と発見。ツボに入ると疲れを忘れてモクモクと続けてしまう事など。

電動工具やチェーンソウを使うと、これは仕事モードになってしまう。
プロセスよりは成果を求めてしまうようになる。
つまり労働のモード(同じく整体では集注という)も全然違う。

前近代と近代は、遊びと仕事の違い?
この一週間、チョウナを使ったり電動カンナを使ったりで前近代と近代を行き来している。
それを繋ぐのが、縄文カヌーという原始だというのが面白い。
だが、以前は近代工具なんか荒仕事用、とバカにした部分もあったが、使ってみるとそのどちらもいいな、とも思える自分に驚いている。
by jhomonjin | 2011-04-24 20:42 | 日本海縄文カヌープロジェクト